残虐な風力発電を見よ。

風力発電が悪いわけじゃない、とはよく聞く話だ。いやいや、風力が悪いんだよ。低周波被害に狂いながらも、刷り込まれた受け売り言葉を私に話しに来る。可哀そうに、何重にも取り囲まれて意思も思考も無くしてしまっている。【納得してもらう】政策だ。役場や自治会が被害者を説得する。【アンタだけやで】とお決まりのセリフが続く。マニュアルがあるから、全国で同じ言葉の羅列を聞いている。

役場や議員は権力丸出しで襲い掛かるからね。被害者はひれ伏して奴隷になってむせび泣く。喚き声に何を言っているのかも分からなかった。60過ぎたオッサンが、私を掴んで泣いている。すぐに裏切るんだけど、これも全国で繰り返す悲劇だ。低周波被害者の会の窪田泰は、各地の被害者を訪ねながら「ウソつきばかりだよ」とこぼしていた。とくに東伊豆町が酷かったらしい。

風力発電は頭をやられるからね、彼も分かっていたはずなんだが、現実は感情が高ぶって腹の立つことよ。窪田さんも低周波被害者として警察に逮捕されている。だから被害者のことは分かっているだろう。私とは笑ったり怒って喧嘩したりと、散々な付き合いをした。谷口愛子とも激しいケンカしたからね。何度も私に「裁判してやる」と書類を送ってきたものさ。重症の低周波被害に遭うと、パニック、生活感がすべて失われる。

ドキュメンタリー『死に山』に書かれている通りだ。ニーナピアポントも詳しく症状を記している。日本政府は、低周波と健康被害は関係がないとしている。核心部分を否定する。これですべてが解決する。被害を訴える者は精神疾患だ。この論理は真っ逆さま、なんだけど、日本人には面白いのだ。感情を煽ってくれる。やっぱりそうか、オカシイと思ったんや。低周波被害に狂う人をコテンパンにやっつけるのだ。

「アホよら、アホよら」と手を叩いて踊ってこ見せる。初め役場でやっていたけれど、やがて被害地でも真似して大笑いになっていた。苛めというより虐殺にまでなっている。被害者が死んだらそれはもう大喜びだよ。その裏にはやはり低周波音によって精神が高揚していたんだと思う。煽りはあるよ。しかしそれだけじゃない。人々は進んで笑いものにしたのだ。わざわざ私に向けて叫びに来る者もいたからね、よっぽど自身に溜まった鬱憤が堪えられなかったんだろう。

「被害はないんや」と吹き出すように言っていた。そんなに感情を込めんでもいいだろうに。すっかり狂っているやないか。こんな私に対する嫌悪感を何度見せられたことか。彼らは彼らで、「言ってやったよ」と達成感を自慢しただろう。風力はワシらのもんや、とな。役場も悪いけど、被害地の人間模様もな、手が付けられない有様を見る。それが面白いと町民の同意がある。もともとが差別地だ。

水俣と同じ図式がある。最初から親父に聞かされた警告だった。風力裁判では、まさにその実態をまざまざと見せられた。へーえ、知っていたけど、現実に体験してみると、何言ってもアカンわ。差別の意味を噛みしめる。社会としては、たぶんそんなアホな私の行動を俯瞰する奴はいる。世間とはそういうものだ。被害のあることは初めから分かっていた。人の思うことはそう変わらない。自業自得と、国の方針だ。

ただ、谷口愛子と町長は同級生で大の友達だった。選挙でもあんなに一生懸命応援していたし、ある日、町長室から電話してきて、町長と一緒にコーヒーを飲んでいると自慢していた。それが谷口さんの風景だ。それが風力被害で急転する。後日のやり取りは見ての通り、よって件ノ如し。これが効いたかな。友人の一人は、あんな人もあるのや、と笑っていた。

じつに恐ろしい人間劇場なのにさ、誰も由良町では言葉にできないんやで。同じ年の幼友達が困っていたらアホにして見殺しにするか。笑いものにして喜ぶか。この人間ドラマに、私に対して男女の関係があるやろ、と役場で言われたものよ。キャー、この話を谷口さんにしたら泣いて怒ったよ。何が悪いのか、とうに人々には分かっている。それが面白いのだ。破壊、崩壊しかないわな。関係ないか。